頼母木小屋から見た夕暮れの朳差岳
飯豊山地は、福島県と新潟県と山形県にまたがって連なる山地で、2,000メートルを超えた山々が連なっています。
その飯豊連峰の北部に位置する朳差岳(えぶりさしだけ)は日本二百名山の一座に選ばれています。
標高は1,636.4m。
2,000メートルに届かない標高で飯豊山地の北外れにある名山は、”エブリサシ”という名前の響きと共に、なんだか不思議なイメージが広がる。
歩かなければ知り得ないのが、一座の毎のお楽しみ。
その山並みは、海と街に寄り添うように在りました。
のんびり2泊3日で、上って下って来ましたよ。
mataTabi 2023/07 梅雨明け
行き先は新潟県飯豊山地 朳差(エブリサシ)岳
✿もくじ✿
☆DAY1〜丸森尾根から頼母木小屋へ〜
●丸森尾根。登山口からすぐ激登(闘)(T-T)
1日目のスタートです!
7年ぶりの飯豊山地です!飯豊の美しさと厳しさにすっかり魅了されてから、ようやく再訪が出来ましたよ!(≧∀≦)
登山口近く。磐梯朝日国立公園の石碑裏におわす山の神様。何となく以前よりも埋もれてしまって緑と同化していきそうな・・・。
今回もお邪魔させて頂きます‥と手を合わせます。
登山口はバス停と駐車場から近いので逆に迷ってしまった(^_^;
さて、いってきまーす!
いきなりの急登が待っていました。登りはじめは身体が準備も出来ていないからキツいしかない(>_<)
でもヒーッて息を付く度に、ちゃんと眺望は上がって行って、まるで遊園地の乗り物の上にみたいに、気付けば真下がある感じ。
細い痩せて歩く道がコレしかない一本。
もはや空に向かう壁なんじゃないでしょうか・・・(^_^;
見下ろす方・・・(^_^; 転がったら沢までポッちゃんと落ちれそうw
とにかく急登だし、気温も沸騰だし、身体が汗を出して出して厳しい登り道。
●夫婦清水で丸洗い
急登はもとより、厳しい暑さで行程タイムを大きくオーバー(^_^;
最初の大休憩休憩ポイントの夫婦清水で大大休憩ですw
分岐の道標からは1分?なすぐに水場はありました。
水量はチョロチョロとしつつも、特に気にならない汲み感。
とっても清流!とは言え無いけれど、こんなに灼熱の日よりで急登に疲れた身体に、水場の流れは恵み以外の何物でもありません・・・。
汗でびしょ濡れのシャツに水をかけ、熱中症予防でクールダウン効果を考慮(^_^;
筋肉疲労のケアに、足にもスポーツタイツの上から沢水を浴びて癒します。
更に急登を繰り返し繰り返し、エグれた道をアスレチックの様にクリアして、ようやく鳥の目線の世界へと抜け出ます。
隣の梶川尾根が大きくて見事で壁のようです。前回はあのヤバい急登を上がりましたが、今回もスゴイ登りですよ〜。
里からは、まず標高を上げる!!って感じです。
こんなに登っても、まだまだ登山口の方が目的地よりも近いんだから(^_^;
●丸森峰から地神北峰〜飯豊天国エリアへと〜
ようやくたどり着くって感じで丸森峰に着。
長くて、熱くて、キツい急登を乗り越えて着いた場所です。
頭上を覆っていた森の木々は限界点で、埴生は低木へと移り変わり、前には開けた視界。
ようやく、飯豊の天上界へと足を踏み入れました。
あぁ・・・、この情景を自分は見たかったんだ。
コバイケイソウが揺れて、夏山の美しい眺めだけが私を待ち受けている。
そんな場所に今年も戻って来られて嬉しいな。
隣に並んで延びる梶川尾根と雪渓の谷筋に、山肌に映る雲の影。
視界が開けても歩く道は、また次のピークへとぐいぐい高度を上げて行きます。
でも丸森峰までの道とは違って、見渡せる山並みと足元のお花畑で気持ちが一気に上がって解放された気持ち。
●ガスの時間帯、地神北峰〜頼母木山〜頼母木小屋へ。
花と熊笹の爽やかな丸森峰尾根の最後の登り道を上がりきると、地神北峰の分岐に着きます。
ここから南へ向かえば北股岳から飯豊山へ、北へ向かうと頼木小屋とエブリサシ岳です。
でも、行く北方向はモクモクとガスに覆われてしまってる(T-T)
頼母木山までの道は、稜線に上がった者だけに与えられる道。
穏やかなアップダウンでうっすらとしか見えない景色の中も、優しく道が導いてくれる。
ガスのシールドが日射しを鈍らせて、着いた頼母木山は孤立した場所みたい。
穏やかな山頂から、夕方への移り変わりに合わせて大気も動き、雲間に輝く夕暮れ時の道を歩きます。
ガスの向こうに、小さな山小屋が見え隠れ。頼母木小屋です!
なんだか、幻想的で可愛い・・・。
自然の演出に、ロールプレイングゲームの世界みたいです( ´艸`)
●厳しい道のり後の天国・・・頼母木小屋
ようやく頼母木小屋に到着しました!
のんびりと時間たっぷり歩いてきましたから、すっかり夕方・・・(^_^;
さっそくテントを設営します。
今回は久しぶりにシングルウォールのテントです!
プロモンテ×オクトスから出ている吊り下げ式のテントで、あっという間に設営(≧∀≦)
軽いシングルウォールなのに、広めの前室が付いています。
夏山装備でのライトウェイトを叶えるのにはピッタリなんじゃないでしょうか。
美しい夕焼けに沸き立つ雲が流れて、エブリサシ岳を見せたり隠したり。
残り少ない太陽の時間と、その終わりの輝きを楽しみます。
頼母木避難小屋は小さな丘みたいなピークにあって、360度の眺望が素晴らしい小屋です。
小屋には冷たくて美味しい湧き水が引かれて、いつも豊かな水があふれ出ています!
こんなに素晴らしい極上なテント場は、本当になかなか無いでしょう。
水場で冷えたビールを片手に、沈んだ夕陽の残り火と、浮かぶ胎内の夜景に幸せな日没の時間です。
もちろん、夜中の空には天の川の星々が溢れていましたよ・・・(^^)
☆DAY2〜頼母木小屋からエブリサシ岳へピストン〜
●のんびり朝の頼母木小屋からスタートです
飯豊山地に美しい夜明けの時間が訪れました。
朝日気配に浮かび上がる朳差岳の優雅な山容と、そこへ至る稜線の影。
朝日の鮮烈な輝きは、刺し貫くように胸に届く。
✿✿✿✿✿✿✿
すっかり優雅な朝を満喫してみれば、周りのテントは出立していなくなっていました。
折角なので、夕陽の眺めの良い位置へテントを移動して、ポチッと尖りのエブリサシ岳へ出発!!
・・・の前に、誰もいなくなった頼母木避難小屋の中も見学w
決して新しくは無いけど、手入れがされてキレイな避難小屋。
飯豊山の避難小屋の中では数少ない、シーズン中に管理人が常駐する避難小屋です。
おトイレは久々のペダル式で、洋式のキレイなトイレ。ていうか、逆に良い匂いすらしていた気がします(^_^;
さぁさぁ!
ようやくですが、のんびり出発しまーす!
荷物が軽いから足通りも軽い(≧∀≦)
●花道ある大石山へのご機嫌ルート
頼母木小屋から次のピークの大石山へ、下りベースの緑と青い稜線。
山を歩く人で、この景色と道を嫌いな人は多分いないでしょう!
目にも身体にもご機嫌な歩き始めのルートです。
お花畑の始まり!(≧∀≦)
マツムシソウの丸い紫色の先には、緑のエブリサシ岳。
振り返ればシシウドの白い花火と、その向こうに頼母木小屋。
足元に咲く、柱頭むき出しなハクサンイチゲ。
タカネナデシコの柔らかなフリンジが絡まり合う。
大石山の山頂へ到着です。
山頂から歩いてきた道と山が見渡せて、自然に目が細まります。
大石山は足の松尾根からの分岐点ですが、登山口に続く県道が融雪原因の為に斜面崩落で通行止になっています。
登山道も同じく通行止めになっていますが、秋には開通されるそう。
●ヤバい登り返し鉾立峰
道は緩やかにアップダウンを織り交ぜて続いて来たけれど、どう見ても立ちはだかる物が視界に近づいて来ます(T-T)
なんじゃありゃ・・・
本日、一番の難所に間違いない鉾立峰です。
眺めるだけなら穏やかな気持ちなんですけど、ぜひ取り付きたいような、やっぱり遠慮したいような・・・(^_^;
そんな鉾立山の登り道。
苦しい息を整えて振り返れば、歩いた山達が緑の波のようにうねって見える。
鉾立峰につきました。
ここから西には、青色をした日本海と胎内市が良く望めます。
どこの巨人さんか知りませんが、この山ならば海を眺めるのに、立派な鉾が立てかけられそうですね。
●朳差岳は、なんか懐かしさに駆られ
ここからはビクトリーロードのように、優雅にエブリサシ岳の頂きへと歩いて行きます。
小屋から望む山容も扇のように広がっていたけれど、真南からの姿も稜線を中心に美しい三角型。
立鉾峰をグイッと下って、ピークへ行く道はもう穏やかでしかない緑色。
あー、気持ちい・・・。
日本海と海岸線のブルーへ、この足元から繋がっている。
そうして気付けば、来たかった風景の中に自分が立っていました。
この一本道の先にある点と、そこにぽつんと小さな小屋のある風景。
なんだか、懐かしい人みたいな場所・・・。
ここまでの辛い道を乗越えてきて良かったなぁ。
胸が高鳴る思いを抑えつつ、ゆっくり道を進みます。
2日かけてようやく目的の山頂に着きました!(≧∀≦)
導くような稜線にスルスルたどり着いた朳差岳の山頂は、360度の眺望を遮る物がない素晴らしい場所です。
更に北側の稜線も美しく広がって、前エブリサシ岳までは天国っぽい道です。
でも、その先の大石ダムへと続く権内尾根もまた長く過酷そうなルートの様。
多分、歩くことは無さそう(^_^;
振り返り、歩いてきた南からの道は、更に高く、更に遙か飯豊山へと続いている。
こちらは、また歩いて行きたいな!
●朳差岳避難小屋と水場のこと
さて、戻り道。
もちろん興味ある朳差岳避難小屋と、最寄りの水場を覗いて見ることにします。
比較的新しい避難小屋は、標高は低いけど夏も残雪の残る場所なので、雪を落とす屋根にしっかりと冬期用の入り口が付いています。
中は広くて、入口には2階へと上がる階段があります。
1階と2階合わせると全部で50人収容が出来るとのこと(O_O)
50人はちょっと遠慮したいですけれど・・・(^_^;
水場は小屋の裏手、東側の斜面を5分くらい下った先にありました。
雪田の雪解け水をすくう感じの水場。
眺望は素晴らしいけれど、枯れ草を通ってくる水はどうも美味しくないですね(^_^;
ちょっと雪田の近くまでお邪魔をして、直接に雪解け水をすくいます。
水場にはハクサンコザクラの花畑もあって、喉には冷たい雪解け水とあわせて癒されました。
☆DAY3〜頼母木小屋から下山〜
●晴れた地神北岳と急降下の丸森尾根
最終日の朝も、最高に美しく爽やかな始まりです。
昨今のよく分からないガチャガチャした気象の中でも、梅雨明け十日説はまだ大丈夫みたい。
天国認定となった頼母木小屋のテント場を、名頃い惜しく撤収します。
色んなテント場を利用してきたけど、こんなに素晴らしいテン場は滅多に無い!そう言い切れる所でした(*⌒▽⌒*)
今回はザックにソーラーランタンをしっかりと充電させられるケースを利用してみましたよ。
コレ便利。
他にもモバイルのソーラー充電器も入れられるし、ゴム紐をザックに被せるだけの取り付けでブラついたりせずに脱着が簡単。
そして、戻り道から頼母木小屋へお別れに振り返ります。
来るときはガスに覆われて見えなかった頼母木小屋の全景は、改めて素晴らしいと感動・・・。
もう愛着しかなくて、再訪は必ずするから。
ただいまって、また行くから。
ここも、ガスガスだった頼母木山からの眺望。
歩いたからこそ、余計に美しく特別に望む、エブリサシ稜線と山頂・・・。
草波が立ち、風が次々と吹いていく。
地神北峰の分岐に立てば、もう朳差岳とはお別れです。
ほとんど頼母木山に隠れてしまったけれど、遙か遠くに点のような小屋とエブリサシ岳は、ここから見えたんだね!
今年はもう最後に咲き残ったチングルマ達に見送られて、長い丸森尾根を帰ります。
飯豊は大きくて懐が深くて、憧れとか望郷とか、懐かしさとか・・・
何かが胸を締め付けて、何かを胸に残す。
そんな、眩しくて美しい山だと思う。
●おまけの飯豊♨︎
下山です! そして、めっちゃ疲れたー・・・!
って登山口へと無事に下山したら、目の前の飯豊山荘から首に手ぬぐいを引っかけた男性が歩いてきたので、思わず聞いちゃいます。
「え?立寄湯ってやってるんですか?」
閉まっているところしか見たこと無かったので、まさか営業しているとは想定外(^_^;
「やってるよ〜。天然掛け流しで、何にもしてないそのまんまの温泉だから、入って行かなきゃ損だよー!」
って、言われちゃったら温泉好きには、もう絶対入浴ですよ!(≧∀≦)
気持ちの良い掛け流しの天然温泉です。
コロナ禍以来で三年ぶりにこの温泉に訪れたと話す、村上市から来た年配女性。
撮ってきたばかりのエブリサシ岳の写真を見せたら、山の上はこんな綺麗なんだね!と驚いていました。
湯上がり。スマホの中の美しい景色を眺めて、改めて山が自分の中に染みこんで行くのを感じながら、心地よい満足感に包まれたひととき。
過ごした日程は短いけれど、とても濃くて、厳しくて美しい時間でした。
またひとつ素晴らしい思い出が増えた山旅に、また帰ってくるねと心で約束しました。
今回の行程