湧き水の天然水は
湧き出るままにすくい飲む。
この天然温泉も、そのまま湯船にやってくる。
なんの手入れもなく、そのまま注がれる。
それで良いし、それが良い。
鹿の瀬温泉浴槽
長野県木曽郡木曽調三岳。
鹿の瀬温泉は、御嶽山の西側の麓近くにあります。
その一軒宿の温泉は、
御岳ブルーライン沿いに
本当にぽつんと建っています。
2022/08
御嶽山への登山帰り。
営業してるかなぁ〜って思いながら、気になっていた鹿の瀬温泉へやって来ました。
御岳ブルーラインの道沿いに年季の入った看板が掲げられていて、不思議な内容が記載されています。
江戸伊万里?浮世絵?
緑と花々に囲まれるように青い屋根の建物。
ちょっと何だか、ともすると、おとぎ話ちっくな感じにも…w
アルミサッシの玄関ガラスから中を伺っても、人気を感じません(^_^;
ちょっと遠慮がちに、ドアをスライドさせて中に入ってみます。
なんていうか、とても個性的な雰囲気の館内です。
受付のカウンターにはパンフレットがあり、内側にはピアノと浮世絵と…
沢山の瓶詰めは何だろう?(^_^;
女将さんが、浴室には鍵付きロッカーなどがないので、貴重品は車に置いて着替えやタオルのみ持って入って下さいと言われました。
そのように準備をして再度玄関を入ると、待っていた女将さんが浴室まで案内をしてくれます。
廊下に沿って、カウンター沿いに置かれたショーケースに江戸伊万里の器や、江戸時代の本物の浮世絵を触って体験出来るように置かれています。
他にも、鹿の瀨温泉が掘削された当時の写真や、実際に掘り出された溶岩石も展示されています。
創業昭和23年とのことですが、この源泉の掘削工事は平成16年と記載されています。新たに掘削した時の記録でしょうか。
積み本もあって、女将の自由な感性が空間にそのまま反映されている感じ。
もう味わいがありすぎで、型にハマらない感じが自然で良いですw
あまりにも濃いめの展示スペースに衝撃すら感じながら、温泉へ向かう廊下を進みます。
その廊下の壁にも浮世絵が展示されていて、温泉旅館と展示館なんですね。
長い廊下には、浮世絵の隙間に客室の扉があります。
なんというか、民宿のようなイメージの温泉宿に感じました。
その廊下の奥。
突き当たりを曲がったら浴室です。
木目のドアに札がぶら下がっていて、手前が男性用で奥に女性用の浴室。
反対側には洗面所があって、入浴後はこちらで髪を乾かしたりして下さいとの事。
合宿みたいな雰囲気(^_^)
入室した女性用の脱衣場は、2畳あるかどうかなスペース。
浴場も狭くて家庭用サイズなので、2人までの利用でいっぱいです。
女将の直筆でしょうか、手書きの効能書きが掲示されていました。
飲泉についても、注意事項が書かれています。
出所の”庭先”というのが良いですね。
そして温泉法にのっとって、温泉分析機関で発行された分析書もしっかり掲示されています。
細かすぎる分析書の掲示では、この温泉の事を伝えにくいとの気遣いかな。
もっと気軽に知ってほしいとの手書き成分表は、温泉への愛情を感じました。
浴室は男女でサイズが異なります。
男性浴場の脱衣場は、最大4人サイズくらい。
男性用の温泉は女性用に比べて、広くて温泉旅館な感じw。
湯船も充分なスペースで、広々と気持ち良さそうです。
さて、こちらは最大2人スペースの女風呂でございますw
脱衣場は狭すぎて写真に収まりません。全てがアップになってしまうので(^_^;
洗い場も、カランはひとつになります。
年期の入った木桶と木の椅子。
床のタイルも創業当時から今に至るまでの風合いが感じられます。
掘り出した温泉をそのまま流し込んでいるんだものね。
アメニティはボディ用に石鹸と、自然に優しい天然ヤシシャンプー
…おぉ!そして、手作りのリンスです(゚o゚;
このパターンはさすがに初めての経験です(≧∀≦)
なんて、楽しそうなリンゴ酢リンス!
是非とも、さっそく使わせて頂きます。
サラッとした液体を髪にかける感じで、リンゴの爽やかな香りと併せてお酢だけにさっぱりする感覚?とでもいうか…。
後日、リンゴ酢リンスをググってみますと、やはり髪がさらさらになる効果があるとのこと。
理由は、傷みがちな髪はもれなくアルカリ性になっており、キューティクルも開いてゴワゴワした手触りですが、お酢のリンスで酸性に寄せることでキューティクルが閉じるそうです。指通りのサラサラ感が戻って、頭皮への消臭や殺菌効果も期待できるそう。
知らなかったです(O_O)
リンゴ酢効果でさっぱりと、いよいよ鹿の瀨温泉に入ります。
掛け流しの湯温は少し高い感じだけど、熱すぎず丁度良い感じ。
滑らかでさらりとした湯さわりで、濁ったお湯が身体をみっちりと包んでくれるみたいです。
リラックス〜…。
暖かくて、優しい温泉です。
まるで、琥珀のように育った湯ノ花の浴槽…。
泉質の「カルシウム(・マグネシウム)・ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉」
炭酸水素塩泉は清涼感ある美肌の湯と言われていて、神経を解きほぐしてリラックス効果があります。
飲泉も出来るので、女将さんの勧めに従って、取り出し口から手ですくって舐めてみます。
少しだけ、しょっぱい様な酸っぱいような感じかなぁ…。
泉質 | カルシウム(・マグネシウム)・ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉 (低張性中性高温泉) PH値6.2 |
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源泉温度/湯量 | 43.6度(源泉)/湧出量記載なし |
効能 | 浴用:きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫、筋肉痛、関節痛、痔、冷え性、自律神経不安定症など 飲用:(飲用)糖尿病、痛風、肝臓病、慢性消化器病、胃腸機能の低下など |
天然のまま。
源泉掛け流しで湯温も消毒も手を加えないで、そのまま注がれる鹿の瀨温泉。
そのままでいられるって、とても素晴らしいことなんだって思う。
それは、長年そうやってきたから当たり前のことなんだろうけど、当たり前であり続けるって、凄い丁寧な事なのかもしれない。
手は加えないけど、手は抜かない。
女将さんは、毎日お湯を抜いて掃除をしているって話してくれました。
拝見した様子も、小さな浴場に人が入れ替わる度に、案内して、その都度にこまめに清掃をしている様。
手作りのリンゴ酢リンスも沢山積まれた書籍も、この温泉の恵みを汚すこと無く、変わらずに守り続けていく為かも知れない。
江戸伊万里や浮世絵は、そんな鹿の瀨温泉に訪れた人を楽しませる為かも知れない。
心身共に静かで爽やかになれた温泉でした。
そんなありのままの温泉は、御嶽山の一部分。
大きな大きな自然と…
御嶽山黒沢口登山道9合目からの眺望
古の信仰が一緒に存在しているみたいな、スピリチュアルを感じられるエリアです。
御嶽山の山頂下に立つ鳥居
黒沢口登山道に立つ石仏
御嶽山と木曽路の旅は、なんだか素朴で暖かい。
人と自然がとても近く感じられる場所だと感じました。